仕事がない時の待機場所であるリネン室にて黙って座っていたら、客から返品された動かないバイブレーターが目に止まった。人気すら無い生活の中にいきなり現れたリアルな男性器の形をした黒いバイブレーターはすごく鮮やかだった。そしてそれを眺めていると、バイト中に怒られた経験がないことにふと気づいた。10ヶ月ほど働いた中でしてきた様々なミスの中で一番酷かったものは、恐らく各部屋に備え付けの灰皿を割ったことだと思うが、その時も責められるわけでも慰められるわけでもなく、反応がほぼ無いような感じで、手早く片付けられた。

 バイブレーターが普通に置かれているし、怒る人が一人もいない職場というのはどう考えても変だ。従業員みんなふざけているのかなと思った。